「車えび」という言葉

エビの語源 (いろいろな説があるようです)

ぶどう説 (色から)

古語で葡萄(ぶどう)のことを「エビ」と言っていた。
葡萄の実と、エビの体の色が似ているので、同じように「エビ」と言うようになった。

このような説は、日本語源大辞典(注1)日本語源広辞典(注2)語源海(注3)に書かれています。

ぶどう説の「ぶどう」とは、日本各地に自生する山葡萄(やまぶどう)、エビヅル(どちらも古語でエビカズラ)が有力。

「えび【葡萄】名「ぶどう(葡萄)の古名。」
日本語源大辞典(注1)
「葡萄の古語を「えび」といいます。それで、体の色から、エビと名付けたという説です。」
日本語源広辞典(注2)
「古代、ブドウを〈エビ〉といい、その色と海老の体の色が似ていることからの二次的な命名。」
語源海(注3)

これらの実は小粒で、一つ一つの実は、ブルーベリーの実のようです。

ぶどう説の「エビ」とは、イセエビ(伊勢海老)が有力。

和の色事典(注4)の葡萄色の解説で「魚づくし 伊勢海老と芝蝦」(歌川広重 江戸時代 中山道広重美術館)の絵を掲載

「えび‥いろ【葡萄色】[名]えびかずらの熟した実の色の意。一説にイセエビの色」
日本語源大辞典(注1)

次の画像を見ると、イセエビは、全身が山葡萄のやや熟した実の色に似ています。クルマエビは、縞模様がやや若い実の色に似ています。

写っているのは、北海道産の山葡萄、長崎県五島列島産のイセエビ、宜野座養殖場で育てたクルマエビ。

山葡萄と伊勢海老とクルマエビ

前の画像のエビは生の状態ですが、

ものと人間の文化史54、海老(注4)では語源として
「煮た時の体色がブドウのエビ色に似ること」

としています。しかし、次の画像のように、加熱すると紫が消え、イセエビは明るく鮮やかな赤、クルマエビはオレンジ色に近い赤になりました。山葡萄の色とは似ていないように見えますが、美しい。

クルマエビとイセエビの加熱したもの
クルマエビとイセエビの加熱したものをむき身に

一方で、えび(葡萄の古名)の語源説として、

「エビヅル、また、 エビカズラの略。カゾラは鬚があり、 エビ(蝦)に似ているからか」
日本語源大辞典(注1)。

さらにエビカズラ(ブドウ科の植物類の古名)の語源説として、

「蝦に似た蔓草であるから〈古事記伝。名言通〉。」
日本語源大辞典(注1)

と書かれている。この説「エビ(蝦)→エビ(葡萄)」が正しければ、ぶどう説「エビ(葡萄)→エビ(蝦)」は間違い、ということになります。

「エビ」と「ぶどう」からは、様々な美しい和の色が生まれてきたようです。 和の色事典(注4)日本史色彩事典(注5)を参考

次の色は、日本史色彩事典 のCMYK値(印刷用の色値)を画像処理ソフト「Photoshop CS6」でRGB値(ディスプレイ用の色値)に変換して表示したもの。

葡萄色
えびいろ

葡萄色/浅葡萄
えびいろ
あさえび

葡萄色/葡萄紫
ぶどういろ
ぶどうむらさき

海老色
えびいろ

海老茶/葡萄茶
えびちゃ

紅海老茶
べにえびちゃ

葡萄酒色
ぶどうしゅいろ

織葡萄
おりえび

「ぶどう」と「エビ」を比べてみると、いろいろと似ているところがあるようです。

上記のように
ぶどうの実の色と、エビの体色
ぶどうの実と、エビの目
皮をむいたぶどうの実と、新鮮なエビのむき身
ぶどうの蔓(つる)と、エビのヒゲ(触覚)
ぶどうの実と、エビの卵

皮をむいたぶどうの実とクルマエビの身
皮をむいたぶどうの実とクルマエビの身
山葡萄の蔓と、クルマエビとイセエビのヒゲ
山葡萄の蔓と、クルマエビとイセエビのヒゲ

ひげ説 (形から)

エビは長いヒゲ(正確には触角)が生えている。「エ」と読む言葉と髭(ヒゲ)の「ヒ」を合わせて、「エビ」と言った。

このような説は、日本語源大辞典(注1)で次のように書かれています。

「エヒゲ(吉髭)の約転<言元梯>。」「エビ(柄鬚)の義〈草盧漫筆=そうろまんぴつ>。」「エは江か。ヒはヒゲの略<和句解>。」
ヒゲのよく伸びたクルマエビを、島豆腐に載せてみました
ヒゲのよく伸びたクルマエビを、島豆腐に載せてみました
クルマエビのヒゲをアップ
クルマエビのヒゲをアップ
クルマエビのヒゲは柔らかいので、よく曲がる
クルマエビのヒゲは柔らかいので、よく曲がる

曲がる説 動きから

古語で指のことを「オヨビ」、「ユビ」などと言った。エビの曲がる姿は、曲げた指を連想するので、同じように「エビ」と言った。
「よく曲がるというところから、オヨビ(指)の変化したもの<衣食住語源辞典=吉田金彦>。」
日本語源大辞典(注1)
「海老の老からすると、腰がマガルに語源がありそうです。」「「ユビが」エビと変化した語です。」
日本語源広辞典(注2)
クルマエビと指の曲がりを比べる
クルマエビと指の曲がりを比べる

餌説 食物連鎖から

エビは、より大きな魚などのエ(餌)になるから。
「エビの生存価値からいえばエ(餌)になるもの」「接尾語のビは「尾」の意味のビである。餌になる尾のある生き物。」
語源辞典 動物編(注6)

その他の説

「味がうまいのでエミ(吉実)説もある(松岡静雄・新編日本古語辞典)。」
語源辞典 動物編(注6)
「イデハリ(出針)の反[名語記]」
日本語源大辞典(注1)
「エは赤の意<松屋(まつのや)筆記>。」
日本語源大辞典(注1)

引用、参考文献

(注1)日本語源大辞典、株式会社 小学館、 監修 前田富祺 、2009年12月15日初版第4刷発行
(注2)日本語源広辞典、㈱ミネルヴァ書房、著者 増井金典、2010年4月30日初版第1刷発行
(注3)語源海、東京書籍株式会社、著者 杉本つとむ、2005年3月31日第1刷発行
(注4)ものと人間の文化史54、海老、著者 酒向昇、1985年8月8日所版第1刷発行
(注5)日本史色彩事典、株式会社吉川弘文館、 編者 丸山伸彦 、2012年5月10日第1刷発行
(注6)語源辞典 動物編、(株)東京堂出版、 編集者 吉田金彦(よしだかねひこ)、2001年5月30日初版発行

漢字で「海老」と書く理由

エビの姿が、鬚が長く腰が曲がった老人に似ているから。